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あるおんな

或る女

有島 武郎

1(前編)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,981 字 · 295 页

青空文庫

古藤はそんならそこらをほッつき歩いて来るといって、例の麦稈帽子を帽子掛けから取って立ち上がった。葉子は思い出したように肩越しに振り返って、

「あなたさっきパラソルは骨が五本のがいいとおっしゃってね」

といった。古藤は冷淡な調子で、

「そういったようでしたね」

と答えながら、何か他の事でも考えているらしかった。

「まあそんなにとぼけて……なぜ五本のがお好き?」

「僕が好きというんじゃないけれども、あなたはなんでも人と違ったものが好きなんだと思ったんですよ」

「どこまでも人をおからかいなさる……ひどい事……行っていらっしゃいまし」

と情を迎えるようにいって向き直ってしまった。古藤が縁側に出るとまた突然呼びとめた。障子にはっきり立ち姿をうつしたまま、

「なんです」

といって古藤は立ち戻る様子がなかった。葉子はいたずら者らしい笑いを口のあたりに浮かべていた。

「あなたは木村と学校が同じでいらしったのね」

「そうですよ、級は木村の……木村君のほうが二つも上でしたがね」

「あなたはあの人をどうお思いになって」

まるで少女のような無邪気な調子だった。古藤はほほえんだらしい語気で、