轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あるおんな

或る女

有島 武郎

1(前編)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,981 字 · 295 页

青空文庫

四

葉子はそれを知りながらもとより侮蔑の一瞥をも与えなかった。

木部が改札口を出て姿が隠れようとした時、今度は葉子の目がじっとその後ろ姿を逐いかけた。木部が見えなくなった後も、葉子の視線はそこを離れようとはしなかった。そしてその目にはさびしく涙がたまっていた。

「また会う事があるだろうか」

葉子はそぞろに不思議な悲哀を覚えながら心の中でそういっていたのだった。

四

列車が川崎駅を発すると、葉子はまた手欄によりかかりながら木部の事をいろいろと思いめぐらした。やや色づいた田圃の先に松並み木が見えて、その間から低く海の光る、平凡な五十三次風な景色が、電柱で句読を打ちながら、空洞のような葉子の目の前で閉じたり開いたりした。赤とんぼも飛びかわす時節で、その群れが、燧石から打ち出される火花のように、赤い印象を目の底に残して乱れあった。いつ見ても新開地じみて見える神奈川を過ぎて、汽車が横浜の停車場に近づいたころには、八時を過ぎた太陽の光が、紅葉坂の桜並み木を黄色く見せるほどに暑く照らしていた。

煤煙でまっ黒にすすけた煉瓦壁の陰に汽車が停まると、中からいちばん先に出て来たのは、右手にかのオリーヴ色の包み物を持った古藤だった。