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せんそうはぼくをおとなにした
戦争はぼくをおとなにした
小川 未明
「童話」1947(昭和22)年2、3月合併号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,627 字 · 11 页
ちょうど、丘の下は、麦ばたけでした。ふさふさした穂が、風のために、波打っていました。
「坊や、なにしてるの。」
母の背中で、目をさました、小さな弟が、頭といっしょにからだをゆり動かしているのに気づいて、清吉は、弟のほうをば、見ました。すると麦ばたけで、破れがさをかぶって手足をひろげた、鳥追いのかかしが、夜も休まずに、番をするのを、弟が、まねているのでした。
「人が、こんなに心配しているのに、坊やはわからないんだよ。」と、母は、目をふいていました。こうきくと、清吉は、なんだか弟が、かわいそうになりました。いたわってやらなければならぬと思いました。
しだいに、東の空が、黄色みをおびて、夜明けが近づいたのであります。この時分から、どこか小川のふちで鳴く、かえるの声が、高く、しげくなりはじめて、さながら、雨が降る音のように絶え間なくきこえてきました。
ひとり去り、ふたり去り、しのびやかに、立ち去る人たちがつづきました。清吉も、こうしているのが心細くなって、母親のたもとにつかまり、
「もう、帰ろうよ。」といいました。
母は、いつまでも、泣いていました。
「おまえ、帰ろうって、どこへ帰るの。