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せんそうはぼくをおとなにした
戦争はぼくをおとなにした
小川 未明
「童話」1947(昭和22)年2、3月合併号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,627 字 · 11 页
「そうかいな、わしのいなかでは、冬になると、みんな頭巾をかぶるが。ああ、それで、おばけといったのかいな。」と、力のない声で、いいました。
「おばあさんきっとそうですよ。だから、かんにんしておやり。」と、清吉は、かれのせいいっぱいのちえをしぼって、なぐさめました。
「そうだったかいな。」と、おばあさんはもう一度しなびた手で、目のあたりをこすると、ふたたび、つえをつきつき、腰をまげて、歩きはじめました。
霜のとけかけた、ちかちかと光る、一筋の道が、はるかかなたの、煙突や、木立の、黒い棒きれをたてたごとくかすむ、地平線の方へとのびていました。おばあさんは、どこまでいくのであろうか。その道を、だんだんと遠ざかってしまいました。清吉はぼんやり、一ところに立って、そのあわれな影を見送ったのでした。
「戦争が悪いのだ!」
かれの口から、しぜんに、この言葉が、ついて出ました。かれは、空想にふけりながらあちこちと、道を曲がって歩くうち、いつしか電車の通る、幅の広い路へ出たのでありました。
あの夜、ここを通ったのだ、かれは、逃げた日のことを思い出しました。小さな弟を負っている母に手をひかれて、燃え狂う、火に追われながら、この道を、通ったのでした。