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せんごしんじんろん
戦後新人論
「文藝春秋 第二七巻第一一号」1949(昭和24)年11月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,363 字 · 15 页
こういう思想は過去にはなかった。人が天分に生きることは、罪悪視されていた。つまり、すべて冒険心というものが、醇風良俗に容れられず、日本人の正しい生き方は、小ヂンマリと月給を貰い、平々凡々に死ぬ、それが人並みで、一芸に身を捧げるというようなことは、歓迎すべき生き方ではなかった。
まったく芸界というものは、先の分らぬものであり、誰がどこまで延びるかは、専門家にもちょッと見当がつかない。海のものとも山のものとも分らない徒弟時代は特にそうで、我々のところへ弟子になりたいと云って、父や母につれられてくる子供があるが、まったく返答に窮する。未来がうけあえないからである。万人にすぐれた才能であればとにかく、十人並とか、十人並以上程度では、とてもすゝめるわけに行かない。
荒巻の場合はこれに反して、すでに世評のある人間であり、彼が勉強して、ほかの学業を学んでみても、彼の野球に於けるが如く、他の分野に於てもぬきんでるとは思われない。内村先生の如く一芸に秀でた専門家には、専門ということの尊さが分り、専門家に貴賤貧富のない理がわかるのだ。精神病医として大成するのも、野球人として大成するのも、その修業の激しさに変りはなく、学びの道に変りはない。