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ピッチャーさつじんじけん

投手殺人事件

坂口 安吾

「講談倶楽部 第二巻第五号」1950(昭和25)年4月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,243 字 · 57 页

青空文庫

「実に要心深い奴だ。しょッちゅう座席を変えてやがんですよ。こうなったら、にがさねえ。コチトラ、ここで見張りますよ」

「よし。オレも見張るよ」

二人は気付かれぬように、彼の後方、はなれた空席に座をとった。

煙山は大阪で降りた。自動車を拾う。二人も自動車を拾って追跡。新淀川を渡って、吹田の近くへ戻ってきて、小さな住宅の前へとまる。

金口は自分で降りていって、煙山の運転手に、

「オレたちは怪しいものじゃない。新聞記者だ。ちょッとワケがあって、つけているから、つけ易いようにカーブのとき、たのむぜ」

と、チップをにぎらせた。

そして煙山のはいった家の門札を見ると、驚いた。キャメル軍の猛打者桃山外野手の住居である。

「敵は桃山か。こいつは、虚をつかれたな。さすがに、やりおるわい」

十四五分もたつと、煙山は出てきた。又、追跡、車は国道をブッ飛ばしてグングン京都の方角へ戻る。細い道へまがりこんで、辿りついたのが、山崎の里。相当な門構えの家の中へ、煙山は消えこんだ。

そこの門札をしらべると、ピース軍の至宝、好打の国府一塁の生家である。

「いよいよ出でて、いよいよ奇、やりおる、やりおる」