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ピッチャーさつじんじけん

投手殺人事件

坂口 安吾

「講談倶楽部 第二巻第五号」1950(昭和25)年4月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,243 字 · 57 页

青空文庫

「そうかい。よく分ったな」

「からかいなさんな。第一ヒントを、ひとつ、たのむ」

「アッハッハ。第一ヒントは、君から、もらったんだよ」

「いけねえな。じゃア、第二ヒントは?」

「第二ヒントは、上野光子が与えてくれたね」

「どんなヒントさ」

「まア、待ってくれ。今日中に、必ず、わかる。犯人をあげてみせるよ。まア、君に、第三ヒントだけ与えておこう。いいかい、血しぶきが壁にとび散ってるんだから、犯人は全身に血をかぶったろうと思うよ。ところが、葉子のほかに、衣服が血まみれという人物がいない。岩矢天狗の衣服に血液は附着しているが、血を浴びたという性質のものではないね。しかし、犯人の衣服は血しぶきを浴びている筈なんだ。そして、誰の部屋からも、血しぶきの衣服は出てこないのさ。これが第三ヒントだよ」

「全然わからんですわ」

「ま、君たち、尾行記でも書いていたまえ。吉報がきたら、最初に知らせてあげる」

夕方になった。日がくれた。六時ごろだ。

電話のベルが鳴る。受話器をつかんで、きいていた居古井警部は、みるみる緊張した。

受話器をおくと、二人に叫んだ。

「さア、一しょに来たまえ。恩人。