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しんどうま
振動魔
海野 十三
「新青年」博文館、1931(昭和6)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,354 字 · 34 页
注射器を使って子宮の中に剥離剤を注入すれば、その薬品が皮膚を蝕すため、胎児と子宮壁とをつないでいる部分の軟い皮が腐蝕して脱落し、堕胎の目的を達するのだった。それを機械的にやるのが、柿丘秋郎のとろうという方法であって、雪子夫人の外部から、強烈な特定振動をもった音を送ってやると子宮はたちまち激しい振動をおこし、揚句の果に彼と夫人との間にできた胎児が、ポロッと子宮壁から剥れおちて外部へ流れ出し、完全に堕胎の目的を達しようというのだった。
この世にも奇抜な惨忍きわまる方法を見つけだした柿丘秋郎は室内を跳ねまわって歓喜したことだった。彼は二万円近くの金を犠牲にし、旅順大学の研究班をダシにつかって、その邸内の一隅に、実験室外には音響の洩れないという防音室を建て、多くの備付器械のうちに、予め、子宮の寸法から振動数をきめて、そのような都合のよい音を出す器械を混ぜて購入したのだった。その機械の据付も終った。器械は、彼が操るのに便利なように、一切の複雑な仕掛けを排し、押釦一つをグッと押せば、それで例の恐ろしい振動が出るように作らせることを忘れなかった。もっともこの器械を作った人は、魔人のような彼の使用目的をすこしも知らなかったのだった。