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そうわ

挿話

徳田 秋声

「中央公論」1925(大正14)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,544 字 · 53 页

青空文庫

「またやっているな」道太は下の座敷の庭先きのところに胡坐を組んで、幾種類となくもっているおひろの智慧の輪を、そっと押入から出して弄っていた。その中には見たこともない皮肉なものもあった。鉄で作った金平糖のようなえらの八方へ出た星を、いくらか歪みなりにできた長味のある輪から抜き取るのや、象牙でこしらえた小さい角棒の組合せから、糸で繋いだ、それよりも小さい砕片を潜らせるのや、いろんなのがあった。おひろはそんな物が好きであった。トランプや花も好きであったが、本を読むことも彼女の日課の一つであった。

道太は暇つぶしに、よく彼女や抱えの女たちと花を引いたが、弱そうに見えるおひろは、そう勝ちもしなかったけれど、頭脳は鋭敏に働いた。勘定も早かった。その声に深みがあるように頭脳にも深みがあった。無口ではなかったけれど、ぶつくさした愚痴や小言は口にしなかった。常磐津の名取りで、許しの書きつけや何かを、みんなで芸者たちの腕の批評をしていたとき、お絹が道太や辰之助に見せたことがあった。

「なるほどね、二流三流どこは、こんなことをして田舎で金を捲きあげているんだね」道太はその師匠が配った抹茶茶碗を箱から取りだして撫でまわしていた。