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そうわ

挿話

徳田 秋声

「中央公論」1925(大正14)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,544 字 · 53 页

青空文庫

二

おひろは銚子を取り上げながら辰之助に聞いたりした。

「伯父さんの病気でね」

「ああ、松山さんでしょう。あの体の大きい立派な顔の……二三日前に聞きましたわ。もう少し生きていてもらわんと困るって、伊都喜さんが話していらしたわ」

伊都喜というのは、道太の兄のやっている会社の社長の弟であった。

それからその一家の経済的窮状や、死活問題の繋っている鉱山の話などしながら、次ぎ次ぎに運ばれる料理を食べていた。

二

おひろの家へ行ってみると、久しく見なかったおひろの姉のお絹が、上方風の長火鉢の傍にいて、薄暗いなかにほの白いその顔が見えた。涼しい滝縞の暖簾を捲きあげた北国特有の陰気な中の間に、著物を著かえているおひろの姿も見えた。

「おいでなさい」お絹は二人を迎えたが、母親とはまた違って、もっときゃしゃな体の持主で、感じも瀟洒だったけれど、お客にお上手なんか言えない質であることは同じで、もう母親のように大様に構えていたのでは、滅亡するよりほかはないので、いろいろ苦労した果てに細かいことも考えるようになってはいたが、気立ては昔し踊り子であったころと少しも変わらなかった。

道太はこの子の踊りを見たことはなかったけれど、七八つ時分から知っていた。