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そうわ
挿話
徳田 秋声
「中央公論」1925(大正14)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,544 字 · 53 页
道太はそこへも訪ねたことがあったが、廓を出てからの親子は何となし寂しげに見えた。
「この家も古いもんや」辰之助は庭先の方に、道太と向かいあって坐りながら言ったが、古びていたけれど、まだ内部はどうもなっていなかった。以前廂なぞ傾いでいたこともあったけれど、いくらか手入れもしたらしかった。
「古びのついたところがいいね」
「もうだめや。少し金をかけるといいけれど、私の物でもないんですから」
「おひろさんのかね」
「ええまあ」
「僕はあすこにいて悪いかしら」道太は離れの二階を見上げながら言ったが、格式ばかりに拘泥っているこの廓も、年々寂れていて、この家なぞはことにもぱっとしない方らしかった。
「どこか静かで気楽なところをと思っているんだけれどね、ここならめったにお客もあがらないし、いいかもしれませんぜ」辰之助も言った。
「おいでなさい。離れでのうても、二階は広いから、どこでもかまいません」
「そうお決めになったらどうです。そうすれば荷物を取りにやりますから」
「そうしてもいいが、温泉へ行くとしたらどこだろう」
「ごく近いところで、深谷もこのごろはなかなかいいですよ」
「石屋ならいい座敷がありますけれど、あすこも割に安くつかんぞな」