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すいりしょうせつについて

推理小説について

坂口 安吾

「東京新聞 第一七八一号、一七八二号」1947(昭和22)年8月25日、26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,257 字 · 11 页

青空文庫

たとえば、恐怖を顔に表して死んでおった、などゝあるが死顔に恐怖が現れても死ぬ瞬間の恐怖などゝは関係のないことで、たのしい心中でも死顔は苦悶にゆがむ。恐怖の死でも、死後の肉体の条件で幸福な顔付になるかも知れず、そんなものが犯罪捜査の手がゝりになったとしたら、この探偵は大概失敗するにきまっていると私は考えるが、然し案外大マジメに日本の探偵小説にはこんなところが現れてくる。

犯罪の捜査上、どうしてもそれだけの法医学上、又は他の学問上の専門知識が必要だという絶対の要請のあるところでだけ、正確な専門知識の裏づけを欠かないように心がけるべきものではないかと思われる。

★

日本の探偵小説の欠点の一つは殺し方の複雑さを狙いすぎることだろう。

兇器を仕掛けて歯車だの糸だの利用して、自然に仕掛から兇器が外れて殺人を完成するというような、こういうことを考える作者はこれを完全犯罪の要素だと考えているのかも知れないが、私はあべこべだと思う。

こういう仕掛というものは相対的な条件が必要で、被害者の位置が定まっているとか、何時何分に被害者がその位置にあるとか、その一致というものはプロバビリティの低いものが大多数で、これが外れゝば一気にシッポをだす。