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すいりしょうせつろん

推理小説論

坂口 安吾

「新潮 第四七巻第四号」1950(昭和25)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,385 字 · 15 页

青空文庫

多くの角度から殺される可能性のある人物を被害者に仕立てなければならない。

だから推理小説というと、ヤタラに大きな邸宅の見取図などが出てくるものだが、邸宅が大きいというところにも謎をふせる要素があるわけだが、それが主たるものではなく、第一の目的は、そういう邸宅に住むような階級でないと、推理小説の謎を複雑に仕組むことができないという要求によるものだ。

又、推理小説は、広い地域を舞台にすると、その舞台の地域に通じない読者の興味を半減する。たとえば「三幕の悲劇」では、フランスのある町からある町の距離、南北に遠く離れて、一日に往復しうるや否や、というところに推理の鍵があるのだが、地理的条件と、交通機関の条件について知識がない読者にはそれに対して明瞭なヒントが与えられていないから、解決をよんでも正しく納得させられない。

又「吹雪の山荘」に於ても、トリックの卓抜さはすでに述べた通りだが、一つ欠点があるのである。それは山荘の地点から、殺人の現場まで、どれぐらいの距離で、地形がどうで、スキーならば短時間に到着しうるというヒントが与えられていないことである。

作者は自分が熟知する地形だから一人ノミコミになり易いが、充分にヒントを与えておいた上で、なお悠々と謎ときゲームを争うに堪えうるだけの充分の配慮と構成とトリックの妙がなけれ