轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
いのちに漲り、危険な疲れを潜め、而も一点曇りなき頭をあげて、重吉は東京へ帰って来る。
――帰って来る重吉は、ひろ子のところへ帰ってくる。――それにちがいないのだけれど――ひろ子は隣室の退屈した兵士たちが、代る代る裏廊下へ出て、空模様を見ては天候に悪態をついているのをききながら考えるのであった。ひろ子が、東京へ、重吉のところへと帰ってゆくこころもちとは、どこかちがうところがあり、その相異は決定的な相異であると思えた。今東京への途中にいてひろ子の念頭にあるのは重吉ばかりであった。重吉のことだけ思いつめて行動していれば、ひろ子にとって必要な生活の諸部面は、それにつれて拓けひろがって来た。重吉は、東京へ、ひろ子のところへと、いそぐ跫音がきこえるように帰りつつあるにしても、ひろ子は自分の存在が、重吉がそれに向って帰って来つつあるもの全体の中の核の一つとでも云うようなものであると考えた。
これまでの十幾年の生活を思ってみれば、それは明かだった。ひろ子は、重吉というものなしに、自分のその間の生きかたを考えることは不可能であった。しかし、重吉はひろ子というものがいようといなかろうと、本質において、決してちがった生きようをする人間ではなかった。