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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页
「それはそうです」
主任はうなずいた。
「じゃ、明日みんなで出かける事にしよう」
「然し」
主任は尚気が進まぬように、
「今度失敗すると、永久にこの事件は闇から闇に葬られて検挙が出来ません」
「君は失敗の事ばかり心配するじゃないか」
署長は叱責するように云った。
「仮令三年前埋葬した屍体だって、実際埋めたものならない筈もなし、又、それと証明の出来ない筈はない。警察官がそう引込思案では駄目だ。我々はこの世から悪人を根絶すると云う任務を持っている。その為には悪人を検挙して法官の前に差出さねばならん。悪人がいつまでも、明白な証跡を我々に提供して呉れない以上、我々は時々冒険を敢てしなくてはならん。見込捜索と云う事は無論ある程度まで危険を伴う。然しそう/\いつでも証拠の歴然とするのを待って検挙を始めると云う訳には行かんじゃないか」
「それは御説の通りです」
主任は静かに答えた。
「じゃ、ひとつ我々は、確信を持って支倉の旧悪を立証すべき証拠物件の蒐集にむかおうじゃないか」
「承知いたしました」
大島司法主任は答えた。
「私も何も徒に消極主義を称える訳じゃないのです。署長殿がそう云う御決心なら、大いに気強い訳です。