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ほうろうき(しょしゅつ)
放浪記(初出)
林 芙美子
「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页
」
由ちゃんは十九、サガレンで生れたのだと云って白い肌が自慢だった。八重ちゃんが肌を抜いでいるかば色の地に、窓ガラスの青い雨の影が、キラキラ写っている。煙草のけむり、女の呆然。
「人間ってつまらないわね。」
「でも木の方がよっぽどつまらない。」
「火事が来たって、大水が来たって逃げられないから……」
「馬鹿ね!」
「ホッホッ誰だって馬鹿じゃないの。」
女達のおしゃべりは夏の青空、あゝ私も鳥か何かに生れて来るとよかった。
電気をつけて阿弥陀を引く。
私は四銭。女達はアスパラガスのように、ドロドロ白粉をつけたまゝ皆ゾロリと寝そべって、蜜豆を食べる。
雨がカラリと晴れて、窓に涼しい風が吹いている。
「ゆみちゃん! あんたいゝ人があるんじゃない! 私そう睨んだわ。」
「あったんだけど遠くへ行っちゃったのよ。」
「素的ね。」
「あら、なぜ?」
「私別れたくっても、別れてくんないんですもの。」
八重ちゃんは空になったスプーンを嘗めながら、今の男と別れたいわと云う。どんな男と一緒になっても同じ事だと私が云うと、
「そんな筈ないわ、石鹸だって、拾銭のと五拾銭のじゃ、随分品が違ってよ。