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ほうろうき(しょしゅつ)
放浪記(初出)
林 芙美子
「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页
がらんどうな家の片隅に、恭ちゃんも節ちゃんも凸坊も火鉢にかじりついていた。
這うような気持ちで、御飯をよばれる。口一杯に御飯を頬ばっている時、節ちゃんが、何か一言優さしい言葉をかけてくれた。
何か、胸がズンと突き上げる気持ち、口の飯が古綿のように拡がって、火のように涙が噴きこぼれた。
塩っぽい涙をくゝみながら、わんわん泣き笑いすると、凸坊が驚いて、玩具をほうり出して一緒に泣き出してしまった。
「オイ! 凸坊! おばちゃんに負けないで、もっともっと大きい声で泣け、遠慮なんかしないで、汽笛の様な大きな声で泣くんだよ。」
恭ちゃんがキラキラした瞳で凸坊の頭を優しく叩くと、まるで町を吹き流して来る、じんたのクラリオネットみたいに、凸坊は節をつけて大声あげた。
私の胸には、おかしく温いものが流れた。
「時ちゃんて娘どうして……。」
「月始めに別れちゃったわ、どこへ行ったんだか、仕合せになったでしょう……。」
「若いから貧乏に負けっちまうのよ。」
赤い毛糸のシャツを二枚持っているから、一枚節ちゃんに上げよう、白々とした肌が寒気だった。
寝転ろんで、天井を睨んでいた恭ちゃんが、此頃つくった詩だと云って、それを大きい声で朗読してくれた。