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しゃよう
斜陽
「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页
けれども、この二つの蛇の事件が、それ以来お母さまを、ひどい蛇ぎらいにさせたのは事実であった。蛇ぎらいというよりは、蛇をあがめ、おそれる、つまり畏怖の情をお持ちになってしまったようだ。
蛇の卵を焼いたのを、お母さまに見つけられ、お母さまはきっと何かひどく不吉なものをお感じになったに違いないと思ったら、私も急に蛇の卵を焼いたのがたいへんなおそろしい事だったような気がして来て、この事がお母さまに或いは悪い祟りをするのではあるまいかと、心配で心配で、あくる日も、またそのあくる日も忘れる事が出来ずにいたのに、けさは食堂で、美しい人は早く死ぬ、などめっそうも無い事をつい口走って、あとで、どうにも言いつくろいが出来ず、泣いてしまったのだが、朝食のあと片づけをしながら、何だか自分の胸の奥に、お母さまのお命をちぢめる気味わるい小蛇が一匹はいり込んでいるようで、いやでいやで仕様が無かった。
そうして、その日、私はお庭で蛇を見た。その日は、とてもなごやかないいお天気だったので、私はお台所のお仕事をすませて、それからお庭の芝生の上に籐椅子をはこび、そこで編物を仕様と思って、籐椅子を持ってお庭に降りたら、庭石の笹のところに蛇がいた。