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しゃよう
斜陽
「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页
福井さんとかいうお方のお宅では、みなさんがもうおやすみになっていらっしゃる様子であった。
「電報、電報。福井さん、電報ですよ」
と大声で言って、上原さんは玄関の戸をたたいた。
「上原か?」
と家の中で男のひとの声がした。
「そのとおり。プリンスとプリンセスと一夜の宿をたのみに来たのだ。どうもこう寒いと、くしゃみばかり出て、せっかくの恋の道行もコメディになってしまう」
玄関の戸が内からひらかれた。もうかなりの、五十歳を越したくらいの、頭の禿げた小柄なおじさんが、派手なパジャマを着て、へんな、はにかむような笑顔で私たちを迎えた。
「たのむ」
と上原さんは一こと言って、マントも脱がずにさっさと家の中へはいって、
「アトリエは、寒くていけねえ。二階を借りるぜ。おいで」
私の手をとって、廊下をとおり突き当りの階段をのぼって、暗いお座敷にはいり、部屋の隅のスイッチをパチとひねった。
「お料理屋のお部屋みたいね」
「うん、成金趣味さ。でも、あんなヘボ画かきにはもったいない。悪運が強くて罹災も、しやがらねえ。利用せざるべからずさ。さあ、寝よう、寝よう」
ご自分のお家みたいに、勝手に押入れをあけてお蒲団を出して敷いて、