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しゃよう
斜陽
「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页
それから兵隊になって、やはりそこでも、生きる最後の手段として阿片を用いました。姉さんには僕のこんな気持、わからねえだろうな。
僕は下品になりたかった。強く、いや強暴になりたかった。そうして、それが、所謂民衆の友になり得る唯一の道だと思ったのです。お酒くらいでは、とても駄目だったんです。いつも、くらくら目まいをしていなければならなかったんです。そのためには、麻薬以外になかったのです。僕は、家を忘れなければならない。父の血に反抗しなければならない。母の優しさを、拒否しなければならない。姉に冷たくしなければならない。そうでなければ、あの民衆の部屋にはいる入場券が得られないと思っていたんです。
僕は下品になりました。下品な言葉づかいをするようになりました。けれども、それは半分は、いや、六十パーセントは、哀れな附け焼刃でした。へたな小細工でした。民衆にとって、僕はやはり、キザったらしく乙にすました気づまりの男でした。彼等は僕と、しんから打ち解けて遊んでくれはしないのです。しかし、また、いまさら捨てたサロンに帰ることも出来ません。いまでは僕の下品は、たとい六十パーセントは人工の附け焼刃でも、しかし、あとの四十パーセントは、ほんものの下品になっているのです。