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しゃよう
斜陽
「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页
子供が二人で暮しているみたいなんだから、いままで火事を起さなかったのが不思議なくらいのものだ。本当にこれからは、気をつけて下さいよ。ゆうべだって、あんた、あれで風が強かったら、この村全部が燃えたのですよ」
この西山さんのお嫁さんは、下の農家の中井さんなどは村長さんや二宮巡査の前に飛んで出て、ボヤとまでも行きません、と言ってかばって下さったのに、垣根の外で、風呂場が丸焼けだよ、かまどの火の不始末だよ、と大きい声で言っていらしたひとである。けれども、私は西山さんのお嫁さんのおこごとにも、真実を感じた。本当にそのとおりだと思った。少しも、西山さんのお嫁さんを恨む事は無い。お母さまは、燃やすための薪だもの、と冗談をおっしゃって私をなぐさめて下さったが、しかし、あの時に風が強かったら、西山さんのお嫁さんのおっしゃるとおり、この村全体が焼けたのかも知れない。そうなったら私は、死んでおわびしたっておっつかない。私が死んだら、お母さまも生きては、いらっしゃらないだろうし、また亡くなったお父上のお名前をけがしてしまう事にもなる。いまはもう、宮様も華族もあったものではないけれども、しかし、どうせほろびるものなら、思い切って華麗にほろびたい。