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しゃよう

斜陽

太宰 治

「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页

青空文庫

文いたらず、人いたらぬ風情、おもちゃのラッパを吹いてお聞かせ申し、ここに日本一の馬鹿がいます、あなたはまだいいほうですよ、健在なれ! と願う愛情は、これはいったい何でしょう。

友人、したり顔にて、あれがあいつの悪い癖、惜しいものだ、と御述懐。愛されている事を、ご存じ無い。

不良でない人間があるだろうか。

味気ない思い。

金が欲しい。

さもなくば、

眠りながらの自然死!

薬屋に千円ちかき借金あり。きょう、質屋の番頭をこっそり家へ連れて来て、僕の部屋へとおして、何かこの部屋に目ぼしい質草ありや、あるなら持って行け、火急に金が要る、と申せしに、番頭ろくに部屋の中を見もせず、およしなさい、あなたのお道具でもないのに、とぬかした。よろしい、それならば、僕がいままで、僕のお小遣い銭で買った品物だけ持って行け、と威勢よく言って、かき集めたガラクタ、質草の資格あるしろもの一つも無し。

まず、片手の石膏像。これは、ヴィナスの右手。ダリヤの花にも似た片手、まっしろい片手、それがただ台上に載っているのだ。けれども、これをよく見ると、これはヴィナスが、その全裸を、男に見られて、あなやの驚き、含羞旋風、裸身むざん、薄くれない、残りくまなき、かッかッのほてり、からだをよじってこの手つき、そのようなヴィナスの息もとまるほどの裸身の