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しゃよう
斜陽
「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页
「眠いの。眠くて、仕方がないの」
と言いました。
「疲れているのよ。眠くなる神経衰弱でしょう」
「そうでしょうね」
涙が出そうで、ふと私の胸の中に、リアリズムという言葉と、ロマンチシズムという言葉が浮んで来ました。私に、リアリズムは、ありません。こんな具合いで、生きて行けるのかしら、と思ったら、全身に寒気を感じました。お母さまは、半分御病人のようで、寝たり起きたりですし、弟は、ご存じのように心の大病人で、こちらにいる時は、焼酎を飲みに、この近所の宿屋と料理屋とをかねた家へ御精勤で、三日にいちどは、私たちの衣類を売ったお金を持って東京方面へ御出張です。でも、くるしいのは、こんな事ではありません。私はただ、私自身の生命が、こんな日常生活の中で、芭蕉の葉が散らないで腐って行くように、立ちつくしたままおのずから腐って行くのをありありと予感せられるのが、おそろしいのです。とても、たまらないのです。だから私は、「女大学」にそむいても、いまの生活からのがれ出たいのです。
それで、私、あなたに、相談いたします。
私は、いま、お母さまや弟に、はっきり宣言したいのです。