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しゃよう
斜陽
「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页
「寒いから、うんと熱くしてみたの」
私たちは、食堂で湯気の立っている熱いミルクをいただきながら、先日の師匠さんの事を話合いました。
「あの方と、私とは、どだい何も似合いませんでしょう?」
お母さまは平気で、
「似合わない」
とおっしゃいました。
「私、こんなにわがままだし、それに芸術家というものをきらいじゃないし、おまけに、あの方にはたくさんの収入があるらしいし、あんな方と結婚したら、そりゃいいと思うわ。だけど、ダメなの」
お母さまは、お笑いになって、
「かず子は、いけない子ね。そんなに、ダメでいながら、こないだあの方と、ゆっくり何かとたのしそうにお話をしていたでしょう。あなたの気持が、わからない」
「あら、だって、面白かったんですもの。もっと、いろいろ話をしてみたかったわ。私、たしなみが無いのね」
「いいえ、べったりしているのよ。かず子べったり」
お母さまは、きょうは、とてもお元気。
そうして、きのうはじめてアップにした私の髪をごらんになって、
「アップはね、髪の毛の少いひとがするといいのよ。あなたのアップは立派すぎて、金の小さい冠でも載せてみたいくらい。失敗ね」