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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

03 第三分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页

青空文庫

「そうそう。そのような噂を耳にしたこともあったが、郷里の皆の衆にも疎遠にすぎて申しわけない。――では、それなる童は、弾正どのの遺子か」

「はい。この子が、かたみとなりました」

「よい子ではないか」

「腕白者でございます」

「いや、面目ないぞ。わしの昔をいわれるようだ。――幾歳になるか」

問われると、おえつは、側にぽかんとしているわが子の膝をついて、

「殿さまのお訊ねじゃ。お答えしやれ」

と、教えた。

「え。なに」

雷の申し子みたいに、赤っ毛で色の黒い男の子は、欄間の金碧だの、侍女たちの衣裳だの、畳の縁だの、きょときょとしていたが、母に膝をつかれて、甘えるように、母の肩へ顔をすり寄せた。

「不作法な」

と、おえつは、睨めるまねして、

「殿さまへ、両手をつかえて、お答え申しあげるのじゃ。そなたの年は幾歳と、お訊ね遊ばしていらっしゃる」

いうと、藤吉郎の方を見て、にやにや笑いながら、

「七歳だい」

と、いった。

「七歳か」

と、藤吉郎は、笑ってしまった。自分の腕白時代を見るような気がしたのである。

「名は何という」

「虎之助」

「ふム。強そうな名だの」

「…………」

虎之助は、ふいに、ぴょいと起ちかけた。