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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

03 第三分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页

青空文庫

庭の方に、何か見て、すぐ飛び出そうとしたのである。

「これ」

おえつは、抑えて、

「実は、この子をお手もとの小者になと、召し使っていただきたいと思いまして、はるばる、中村から伴れて参りました。――父の弾正は、侍でしたから、どうかこの子も、行く末は侍の端になとしてやりたいと思いまする。それが、亡き良人には、せめてもの手向けにもなろうかと……」

おえつは、片手に、腕白を抱きながら、畳へ涙をこぼしていった。

藤吉郎は、頷き頷き聞いていたが、彼女の言葉が切れると、

「よいとも。わしの手もとにまかせておけ。当人の器量にあるが、何か一人前には仕立ててくれる。――虎之助、これへ来い」

と、さし招いた。

「はいッ」

待っていたように虎之助は前へ出て、藤吉郎へお辞儀をした。そして、後ろの母親を振り向いてからまた、手をつかえ直した。

殿さまの前へ呼ばれたらこうするのですよ、とあらかじめ教えられていたものだろう。――それを見ているおえつの眼は、いかにも愛しそうである。また、心配そうである。

「なかなかきかん坊らしいの」

藤吉郎はつぶやいて、側にいる寧子や老母と共に、微笑んだ。

「虎之助」