轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
10 第十分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 页
いや、かえって禅の生死超脱の工夫を、修羅の中で、闘争のために用うる者の方が殖えてしまった。
いまや、天正の世は、応仁の乱麻から、割拠していた群雄のおびただしい複数が、徐々に単位に近づき、信長によって、飛躍的にそれが一に達しようとしたとき、忽然と彼は世を去り、彼の死は加速度に、一のてまえの――“二つの世代”を眼前にして来た。
そうした人の世を、これまた、まったく無感覚のように、
「オ……。ここまで来ると、もう梅も散っている。岩手の里よりよほど陽気は早いな。水のすがたも春らしく、桜のこずえも、あと一雨でほころび初めよう」
わらじに踏む草萌えを楽しみながら、おちこち眺めては、ひとり自然の草木と語ってゆく一旅人がある。
赤坂の宿場から南平野へ出、やがて神戸の町はずれへ来たその旅人は、相川堤の桜並木に立つと、ふと思い出した山家集の一首を、小声でひとりごちに歌っていた。
「……春となるさくらの枝は何となく花なけれどもむつまじきかな。――花なけれどもむつまじきかな」
その時どこかで「友松さま」と、よぶ者があった。旅人は堤から川のみぎわを見まわしたが、耳のせいかと思い出したらしく、また、花なき桜の梢を見あげていた。