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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

10 第十分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 页

青空文庫

長島、神戸などにたて籠っている伊勢の残軍である。

その方面には、専ら、織田信雄が当った。掃討も終りを告げかけていた。

で。――秀吉が越前から還ったと聞き、信雄は、戦地から京都へ来ていた。そして、この日、京都で秀吉と会った。

「長島が陥ちたら、長島城へお還りあるがよい。美濃、伊勢には、御縁故の深い家すじや侍どもも多く、あなたをお慕いしていよう」

秀吉はいった。

信雄は欣然として、長島へ帰った。庸劣なこの公達は、秀吉から約された微々たる戦捷の分け前をもって、鬼の首でも取ったように、得々として去った。

「大徳寺の使僧が、御寸暇にお目通りねがいたいと、今朝から控えておりますが」

信雄が辞去した後の客は、大坂表から来た池田輝政であった。この輝政が長尻で、折々、秀吉と共に、笑声を洩らして来るので、近習がこう伺い出ると、

「お、お」

秀吉は、思い出したように、

「二日の法要の打ち合わせか。――今朝参ると、自分から大徳寺へ申しやっておきながら、うかと、忘れおった。――彦右衛門へいえ」

「蜂須賀どのには、昨夜、槙島へお立ちでございました」

「そう、そう、彦右衛門はいないの。