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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
10 第十分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 页
ばなしまで織り交ぜて語りつづけた。そして、その言裡には、
(家康どのが、近頃いかに人物らしくいわれていても、要するに、地方的人物にすぎまい)
というところを、暗にほのめかして、ついては――と、また要点を秀吉からの内意へもどした。
「秀吉様には、是が非でも一度、あなた様にお会いしたいと仰せておらるる。と申しても、物情騒然、すぐとは望みも得まいが、やがてにおいては、秀吉様御自身、この方面へ御馬をすすめられる日のあるは見えておる。そのとき、木曾川渡しの前に、もし沢井どのの迎えに出会うならば、いかにうれしかろうぞ――などとも仰せられた。まったく、左衛門どのに、打ち込んでおらるるのでおざる。先頃、われらの以前に当御城内へ参り、いたくお叱りうけて立帰った使者どもの報告を聞かれても、秀吉様には、さらにお怒りないのみか、かえって貴殿の節義を愛され、なお御執心を高められたようでおざった」
ここまで漕ぎつけてもらったので、武藤清左衛門も、潮に乗って、説き始めた。
「いま、蔵主が申しあげたことばに、何の誇張もありませぬ。もしお味方の御内諾を得るにおいては、後日のため、当方よりも何かのお証を――とて、実は、秀吉様より御朱印をおあずかりいたして来たような次第で」