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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

10 第十分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 页

青空文庫

ゆうべ、難儀したことや、いまも野原で、あやうい目にあうところだったことも、何の、はにかみなく告げた。

そして、ことばの終りに、

「わたくしは、十二、三歳のとき、よそながらですが、あなた様を、折々、お見かけ申しておりました」

と、白珠のような歯を、ちらと、笑みこぼして見せた。

「はてな? そうか」

秀吉は、小首をかしげたが、於通のはなしに、以前、安土の城に奥仕えしたこともあるとのことを思い出して、

「安土のお城でか」

「ええ」

「この筑前も、亡き右大臣様(信長のこと)のお側へは、よく召されたことゆえ、そんな時でも、見かけたのであろ」

「信長さまが、宣教師の連れて来た黒色人を、安土のお庭へ通されて、局の女房どもも、見よとて、大勢で、御覧あそばしたことがありました」

「おおあったの。そんなことも……」

「その折、あなた様も、お側近くにおられましたでしょ。あなた様のお顔も、いちどお会いした者は、わすれることはないと、たれもが申しておりました」

猿に似ていることは周知であり、自分でもよく知っている自分の顔であった。

それを、棚おろしされたような気がしたのであろう、秀吉は、大いにてれて、