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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
10 第十分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 页
家康をして、虚相の“総攻撃”に心を向けさせ、そのまに、間道を下って、一挙、徳川の本国岡崎の手薄をつく作戦だった。
いまや、その打合わせと、準備は成り、犬山城を中心に、奇襲軍は、次のように編制されていた。
第一隊 池田勝入ノ兵六千
第二隊 森武蔵守ノ兵三千
第三隊 堀 秀政ノ兵三千
第四隊 三好秀次ノ兵八千
右のうち、先鋒の第一第二がもちろん決死行の中心力だった。堀秀政は軍監、秀次は総帥の格である。
その夜は、四月六日(陽暦の五月十五日)――真夜半を期して、二万の将士は、犬山をはなれた。
――極秘のうちに。
旗を伏せ、馬蹄をしのばせ、二宮村、池内村をすぎ、物狂い坂で、朝となった。
兵糧。小憩。
ふたたび行軍をつづけ、大草、柏井、篠木を経て、上条村につき、ここに宿営を張って、
「大留城の様子を見てこい」
と、偵察を放った。
かねて、大留城の森川権右衛門にたいしては、池田勝入から、青鷺の三蔵をやって、裏切りの約束をしめし合わせてあるが、なお、念のために――と、その三蔵を頭として、一組の隠密を、瀬ぶみに向けたものだった。
三蔵たち、青鷺組の者は、そこから小一里さきの、庄内川の渡り口を扼している大留城を、やがて宵空の彼方に見る辺りまで、近づいて行った。