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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
10 第十分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 页
戦場と異ならなかった。
また。
この時代の特徴として、工事はすべて、請負制度だった。いわゆる「割ぶしん」とよぶ制度である。
割普請は、むかし、清洲城の名と藤吉郎の出世仕事として、有名であるが、あれはべつに藤吉郎が初めて案出した仕組みではない。
戦国時の土木といえば、火急を要さない工事などはほとんど少ない。殊に、城塞の工は、大概の場合が、敵前の突貫工事である。
いかに迅速に、いかに緊密に――しかも敵をして間隙を窺ういとまもなきうちに、これを成就さすかが――眼目であった。
割普請制は、それに応えて、自然にできた約束なのである。
この制約の進捗中に、最も戒められるのは、俗にいう、
(迅かろう、悪かろう)
の拙速が常態になりやすいことだった。
反対に。
割普請制の特徴の第一は、働く者各※(二の字点、1-2-22)が、
(俺の領分、俺の時間)
を持つことになるので、そこに日傭い根性では出て来ない“自己への試し”が現わされて来ることにある。
(俺が本気でやればどのくらいな働きができるか)
を先ず試み、それから、
(やれば、こんなものだ)
という自信をもち、
(迅いばかりじゃないぞ、俺の仕事にケチがつけられるならつけてみろ)