轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
10 第十分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 页
その背に、一枚の笹が、風に鳴っていた。
仰々しい旗さし物だの、家の紋だのを、背中にさして戦うのは、名誉慾の印をかかげているようなものだ。大人げない飾り物だ――と日頃からいっていて、戦場に出ると、つねに、路傍の笹の枝を切って、無造作に、よろいの背に差し、悍馬を馳駆して働きまわるところから、人呼んで彼を“笹の才蔵”とも称している一風変った男なのである。
「……ちぇッ」
と、秀次は、才蔵の目に、路傍の笹ッ葉ほども見られなかった忌々しさを、舌打ちにもらして、見送った。
うしろを見る。敵の土けむりだ。――が、槍、銃、太刀、ごっちゃにした潰走兵の一かたまりが、秀次の姿をみとめ、
「殿、殿。そちらへ走っては、さらにべつな敵に会いますぞっ」
呼びとめて、近より、彼のからだを、引っかつぐように包んで、香流川の方へ逃げた。
途中で、放れ馬をひろい、やっと秀次をそれに乗せ、細ヶ根という所で、ひと息ついていると、またも、敵の襲撃にあい、さんざんになって、稲葉方面へ落ちのびた。
こうして、池田勝入が作戦の侵入軍は、その本隊であり、主将のいる最後方の第四隊から、まっ先に、完全なる殲滅をうけてしまった。