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ひめくり

日めくり

壺井 栄

「群像」1963(昭和38)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,884 字 · 34 页

青空文庫

病室の前に立った老夫婦は、いつになくひっそりとした気配に思わず顔を見合せた。いつものうめきが聞えない。こつ、こつと、できる限り押えたノックをした。ひろみが顔を出し、

「あら」

とうれしそうにいい、ベッドの方へ、

「おじいちゃんと、おばあちゃんよ」

山形は珍しくベッドの上に手をついて起きかかっていた。たった今、起してもらいかかったところだったらしく、ひろみはすぐ近よって、ゆっくりとあぐらをくませてやった。骨ばかりのような足が、山形だけの自由にはならぬらしく、手間どった。しかしきげんは上々らしく、がんこなしゃっくりもとまっている。

「元気ね、今日は」

ひろみが代って、

「たった今、やっととまったのよ」

「よかったわね」

「でも、すぐまた――」

いいかけると、

「うるさーい!」

思いがけない元気さで山形がどなった。

「ごめん、ごめん」

ひろみは首をすくめ、

「つい、よけいなこといっちゃって」

「それがうるさいんだっ!」

元子はびっくりした。そんな元気さがまだあったのかと、そのことにもおどろいたし、ひろみの叱られ上手にも感心した。ひろみは、

「お茶!」

「はい」

魔法瓶の湯を急須に注いでから文吉たちの湯呑みをとり出していると、