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にちにちへいあん

日日平安

山本 周五郎

「サンデー毎日臨時増刊涼風特別号」1954(昭和29)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,297 字 · 56 页

青空文庫

九

源太夫はこちらを見て頷き、いま支度をさせるから、と立っていった。

九

まもなく若侍が戻って来て、また元の六帖へ彼をつれ戻した。そうして食膳を出されたが、麦ばかりのようなどす黒い飯に、冷えた味噌汁と漬物だけで、その汁にも千切り大根の欠けたのが三つしか入っていなかった。菅田平野はまた腹を立てた。

「食い残しじゃないか」と彼はつぶやいた、「――なんという無礼なけちくさい家だろう」

だが空腹には勝てない、腹を立てながら喰べ終ったが、このあいだに家の中がざわざわし始めた。表廊下をしきりに往き来する足音や、人を呼びたてる声などが聞えた。

「もうおれのことなんぞ放ったらかしか、そうだろうな」と菅田平野は独り言を云った、「――それならこっちは、ひとつ」

彼はしばらく物音を聞き定めてから、立ちあがって、そっと中廊下へ出た。

――陸田城代がここに監禁されているかどうか、いるとすればどの辺の座敷か。

中廊下の左右を眺めた。人の来るようすはない、彼はさっきの八帖間のほうへ歩いていった。そちらが奥で、ずっと座敷が続いているらしい。だが、内庭の見える処まで来ると、ふいに右手の襖があいて、中年の侍が顔を出した。