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にほんのでんせつ

日本の伝説

柳田 国男

「日本神話伝説集」日本児童文庫、アルス、1929(昭和4)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,931 字 · 207 页

青空文庫

昔弘法大師が、この地を通って、大きな岩の落ちかかっているのを見て、これはあぶないといって、二本の杉箸を立てて去った。それが芽をふき成長して、大丈夫な大きな樹になったのだと伝えております。(徳島県老樹名木誌。徳島県海部郡川西村芝)

伊予の飯岡村の王至森寺にあるものに至っては、なん人の箸であったかということも不明になりましたが、それでも杉の木の名は真名橋杉、まなばしとは御箸のことであります。八十年余り前に、この木を伐ってしまったところが、村に色々の悪いことが続きました。或は真名橋杉を伐ったためではなかろうかといって、新たに今ある木を植えて、古い名を相続させ、それを木の神として尊敬しております。(老樹名木誌。愛媛県新居郡飯岡村)

九州には、またこんな昔話のような伝説が残っております。昔肥前の松浦領と伊万里領と、領分境をきめようとした時に、松浦の波多三河守は、伊万里兵部大夫と約束して、双方から夜明けの鶏の声をきいて馬を乗り出し、途中行き逢うた所を領分の堺に立てようということになりました。ところがその夜、岸嶽の鶏が宵鳴きをしたので、松浦の使者は早く出発し、隣りの領の白野なた落という所に来て、始めて伊万里の使者に行き逢いました。