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にほんのでんせつ

日本の伝説

柳田 国男

「日本神話伝説集」日本児童文庫、アルス、1929(昭和4)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,931 字 · 207 页

青空文庫

この滝の近くに来て、紀州熊野の那智の滝の話をすることは禁物でありました。那智の滝とどちらが大きいだろうといったり、またはこの滝の高さを測って見ようとしたりすると、必ず神のたたりがあったというのは、多分この方が那智よりも少し小さかったためであろうと思います。(燈下録。徳島県海部郡川上村平井)

橋などは、殊に遠方の人が多く通行するので、毎度他の土地の橋の噂を聴くことがあったろうと思いますが、それを非常に嫌うという話が多いのであります。橋の神は、至ってねたみ深い女の神様であるといっておりました。

甲府の近くにある国玉の大橋などは、橋の長さが、もとは百八十間もあって、甲斐国では、一番大きな、また古い橋でありましたが、この橋を渡る間に猿橋のうわさをすることと、野宮といううたいをうたうこととが禁物で、その戒めを破ると、必ずおそろしいことがあったといいました。今でも土地の人だけは、決してそういうことはせぬであろうと思います。猿橋は小さいけれども、日本にも珍しいという見事な橋でありますから、それと比べられることを、この大橋が好まなかったのであります。そうして野宮は、女のねたみを同情したうたいでありました。