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にほんのでんせつ

日本の伝説

柳田 国男

「日本神話伝説集」日本児童文庫、アルス、1929(昭和4)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,931 字 · 207 页

青空文庫

そればかりでなく咳の婆様という名前も人が忘れてしまって、誰がいい出したものか、腰から下の病気を治してくれるといって、頼みに来る者が多くなっていました。そうしてお礼には履き物を持って来て上げるとよいということで、像の前にはいろいろの草履などが納めてあったそうです。(土俗談語)

食べ物を進上して口の病を治して貰った婆様に、後には足の病気を頼み、お礼に履き物を贈るようになったのは、ずいぶん面白い間違いだと思いますが、広島市の空鞘八幡というお社の脇にある道祖神のほこらには、子供の咳の病が治るように、願掛けに来る人が多く、そのお供え物は、いずれも馬の沓であったそうです(碌々雑話)。道祖神は道の神また旅行の神で、その上に非常に子供のすきな神様でありました。昔は村中の子供は、皆この神の氏子でありました。馬に乗って方々のお産のある家を訪ねて来て、生れた子の運勢をきめるのは、この神様だという昔話もありました。すなわち子供を可愛がる為に、馬の沓の入り用であった神なのであります。路を通る人が馬の沓や草鞋を上げて行く神はどこに行ってもありますが、今では名前がいろいろにかわり、また土地によって話も少しずつ違って居ます。