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にほんのでんせつ
日本の伝説
柳田 国男
「日本神話伝説集」日本児童文庫、アルス、1929(昭和4)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,931 字 · 207 页
それを宝物のように大切にしておりましたが、その評判が高くなって殿様に取り上げられてしまい、赤ん坊がお腹がすいて泣き立てても、なめさせてやることが出来ません。こまり切って親子の者が山へ登り、沼の岸に出て泣いていると、にわかに大浪がたって片目の大蛇が現れ、くわしい話を聴いて残った左の方の眼の玉を抜いてくれます。喜んでそれを貰って来て、子供を育てているうちに、その玉も殿様に取り上げられます。もう仕方がないから身を投げて死のうと思って、また同じ沼へやって来ますと、今度は盲の大蛇が出て来て、その話を聴いて非常に怒りました。そういうひどいことをするなら、しかえしをしなければならぬ。二人は早くにげて何々という所へおいでなさい。そこでは良い乳を貰うことが出来るからといって、親子の者をすぐに返しました。そうしてその後でおそろしい噴火があって、山が崩れ、田も海も埋まったのは、この盲の大蛇の仕返しであったというのです(筑紫野民譚集)。遠州の有玉郷では、天竜川の大蛇を母にして生れた子が、二つの玉を貰ってそれを持って出世をした話が、古くからあったようですが、眼を抜いたということは、そこではいわなかったと思います。