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にほんのでんせつ
日本の伝説
柳田 国男
「日本神話伝説集」日本児童文庫、アルス、1929(昭和4)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,931 字 · 207 页
神代の天の岩屋戸の物語にも、似通うた所のある話であります。(益田郡誌。岐阜県益田郡上原村門和佐)
昔は村々のお祭りでも、毎年新たに神様の衣服を造ってお供え申していたようであります。その為には最も穢を忌んで、こういうやや人里を離れた清き泉のほとりに、機殿というものを建てて若い娘たちに、その大切な布を織らせていたかと思います。その風がだんだんにやんで、後には神のお附きの女神が、その役目をなさるように考えて来ました。そのわけももうわからなくなって、しまいには竜宮の乙姫様などということになりましたけれども、ここできこえる機の音は竜宮のものでなく、最初から土地の神様の御用でありました。ちょうど片目の魚が生け牲のうちからおそれ敬われたように、後々神の御身につく布である故に、その機の音のするところへは、ただの人の布を織る者は、はばかって近よらぬようにしていたのであります。旧五月一と月の間は、ただの女は機を織ってはならぬといういましめがあり、これを犯す者が厳しく罰せられる村は今でもあります。
安芸の厳島などは、島の神が姫神であった為か、昔は島の内で機を立てることが常に禁じられてありました(棚守房顕手記)。