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にほんのにわ
日本の庭
室生 犀星
「日本の庭」1943(昭和18)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,450 字 · 5 页
進んだら退くことを知らぬ。庭作りの最後は財を滅ぼし市井の陋居に閉息するものが多い。
庭を見るということもその日の時間がたいせつであって、朝早く見て美しい庭もあろうし、午後の斜陽の射すころに栄える庭もあろうから、その庭の主人にいつごろがいいかということを打合せする必要がある。いきなり訪ねて庭を見せてくれということは無躾であって、読書している机のそばにいきなり訪ねて坐り込むようなものである。たいていの庭は午前なら十時ごろまでは日の射し方もななめにはしっているから、直射する午後一時から三時ごろを避ければ、夕方はどういう庭でも美しいという理由で、この二つの時間に庭を見ることで間違いはなく、無礼でないかも知れない。
夕方も大して暗くならない日没前一時間くらいなら、春夏秋冬を通じてまず夕暮の庭を見ることで、時間的に効果が多い。
その日没後すっかり暗くなるまでの庭を見、庭が夜の中に沈み込むのを見おさめることは、庭というものの精神を見てやるようなものである。しかしそれはその庭の主人がいつも見ているだけで、他人が見られない奥の深いところかもわからぬ。庭が夜の中に、襟を正して身づくろいしながら褥にはいるときは、その庭にあるものが一さいに融けあう美しい瞬間である。