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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页

青空文庫

「さあ、うんと喫わんといかんぞ、うんと喫って大きくなってくれ、お前は何になる」

「あたいは侍になるのだ」

「ほう、侍になるのか、侍になって扶持を頂戴するなら、こんな旨いことはないが、侍はまかり間ちがえば、腹を切らにゃいかんが、腹が切れるか」

「切れるよ、腹なら」

「そうか、そいつは豪い、人は心がけ一つじゃ、侍でも、学者でも、お坊さんでも、神主でも、やろうと思や何でもできる、神主と云えば、牧野の旦那は豪い神主じゃ、お前のお母は慧で、気が注くから、牧野さんで眼をかけてくだされる」

「おっ母は何時戻る」

「もう、おっつけ戻るぞ、夕飯を牧野の旦那が召しあがったら、戻って来る、牧野の旦那は豪い方じゃ、お前に云うても判らんがの」

源吉が箸を置いたところで人の跫音がして入って来た者があった。

「今晩は」

「今晩は」

為作は盃を持ったなりに月の射した縁側の方を見た。四十位の男と三十位の男の顔があった。

「秀と金次か、何か用か」

為作の詞にはあいそがない。秀と云う四十男はきまり悪そうな笑い方をした。

「べつに、そう用もないが、話しに来た」

「そうか、明日の家業にさしつかえなけりゃ、話していけ」