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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页

青空文庫

夕方になってその中の一人は、亡者の女の着ていた白衣を拾って来た。その白衣は隣村へ出る谷間の小路の縁に落ちていたのであった。

主翁はもしやと思うことがあったので隣村へ往って探ってみた。村の四辻の榎の下で茶を売っていた老婆が云った。

「今朝、私が起きたところで、壮い男と女が、この前を通って往きましたよ」

主翁は五十両の大金を客に盗まれたように思った。彼は家に帰って客の手荷物を更めた。風呂敷包の中には一枚の着がえがあり、床の上には汗まみれになった道中着と脚絆、股引、それから江戸下谷長者町小八という菅笠があった。

客は江戸の下谷長者町の小八と云う者であるらしい。主翁は急に旅装束をして江戸に向けて出発した。

四

夕方、下谷の小八の家では五六人の者が集まって来て酒を飲んでいた。小八の傍には壮いな女が笑い顔をして坐っていた。

小八はその前日帰ったところであった。立山へまで死んだ女房の姿を見に往っていた者が、他の※(「女+朱」、第3水準1-15-80)な女を伴れて来たので長屋中の者はみな眼を円くして驚いた。それが仲間の者にも知れたので好奇な者が集まって来たところであった。