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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页

青空文庫

主翁はふと我家へ探索の手が廻ったので、奉行があんなことを云うかも判らないと思った。主翁の顔色はすこし変った。

「……どうだ、その方はどうしても知らぬと申すか」と、奉行はいかつい眼をして主翁を見おろした。主翁の心は顫えた。主翁は思わず頭をさげた。

「恐れ入りました」

「そうだろう、足のある幽霊を抱えてるだろう、愚民を惑わして金銭を詐取するとは、不届至極の奴なれども、今日は格別の取計らいによって、宥しつかわす、早速故郷へ帰って、その幽霊どもに暇をやって、正道の宿屋家業をするが宜い、もしこの詞を用いずに、また幽霊を召抱えて人を惑わすようなことがあれば、今度はその方をほんとの足のない幽霊にするぞ」

「恐れ入りました」

「然らば小八とやらの伴れて来た幽霊にも、この場において暇をやり、小八には欺き執った金を返すが宜い」

「恐れ入りました」

主翁の右側に坐っていた小八は得意そうに笑って見せた。

六

奉行所をさがった一同の者は家主の家へ往った。

亡者宿の主翁は一両の金と、女に暇をやる証拠の書類を小八に渡した。

そうなると二人の間の感情もさらりと解けた。その夜家主の家では家主老夫婦が仲人になって、小八と女に婚礼の盃をさした。