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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页

青空文庫

甚九郎の心は小判に吸いつけられた。

「それじゃ、二人でいっしょに稼ごうじゃないか」

甚九郎は女と夫婦になる約束をした。彼はその朝大屋へ往って、国元から従妹が尋ねて来たから暫く家へ泊めて置くと云った。

甚九郎の隣に源吉と云う独身者が住んでいた。棒手振が渡世で夜でないと家にはいなかった。その夜も帰りに一ぱいひっかけてふらふらと帰って来たが、隣の新夫婦が気になるのでそっと覗いてやろうと思って、甚九郎の家の窓の下へ寄って往ったところで、月の光の射した窓の障子に電光のような青い光がきらきらと映った。

「おや、おかしいぞ」と、源吉は不審したがその不審の下からぶきみになって来た。で、ちょっと足を止めて躊躇したが、どうも不思議でたまらない。思いきって寄って往って障子の穴から覗いてみた。行灯の横手に坐った恐ろしい獣のような顔をした女が、瓦盃へ油壺の油を入れて飲んでいるところであった。源吉は怕くて体がぶるぶると顫いだしたが、知られるとどんな目に逢うかも判らないと思ったのでやっと忍えて窓から離れようとすると、女は行灯の火を吹き消して横になった。その形は小牛のように見えた。