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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页

青空文庫

女の体に油断が見えた。甚九郎は腰の脇差を抜いて女の胸元を突いた。女は突かれながら甚九郎に掴みかかろうとした。甚九郎は身をかわした。女は仰向きになって倒れた。

それを見ると甚九郎は刀を投げ捨てて逃げ走った。そして、気が注いてみると己は某寺の門前に立っていた。彼は其処へ駈け込んだ。

六十前後の住持の僧が室の上から甚九郎を見て云った。

「その方は、今、山姑に逢ったな、そのために生命があぶない、どうした、理を云え」

甚九郎はその理由を話した。

「女を殺しても、霊鬼が汝の身についてるから、今晩のうちに殺される、早く往ってその死骸を持って来い、災を除けてやる」

甚九郎はしかたなしに辻堂へ往って、女の死骸を莚に入れて背負うて来た。住持はその額に鬼畜変体即成仏という七字を書き、首に血脈袋と珠数をかけて新らしい棺桶に入れさした。

「その方はこの棺を仏壇へ供えて、その傍で朝まで念仏するが好い、どんな恐ろしいことがあっても、声を立ててはならん、もし声をたてると生命がなくなるぞ」

甚九郎は住持の云うとおりにしていると、夜半になって雨が降り出し怪しい電光がしだした。と、仏壇が鳴動をはじめ、棺の蓋が開いて中から女の死骸が起きて来た。