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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页

青空文庫

「どうか御覧くださいますように」と、住職は揉手しながら云った。

「見よう」

監物が腰をあげると老僧が前に立って案内した。監物の臣は監物の背後からしぶしぶ踉いて往った。

芒の穂が其処にも此処にもあった。住職は祠の前へ往って一足後になっている監物の傍に来るのを待ち、左の手首にかけた珠数を持ちなおして、それを爪繰りながら何か口の裏で唱え、それが終ると木連格子を左右に開けた。寂寞と坐った薬師像の右側に、火焔を負い剣を杖ついた不動の木像が小さいながらに力を見せていた。

「これだな、なるほど」と、監物は不動の木像に眼を留めた。

「どうしても、運慶か湛慶かの作と思いますが」

「うん、そうだな」と、云って何か考えだした監物は「これを持って往こう、これがいい」

住職は眼を円くして監物の横顔を見た。

「門口が淋しいから、これを据えるといいだろう」と、云って住職の方を見た監物の眼と住職の驚いた眼が衝突かった。

「どうだ、和尚さん、持って往ってもいいだろう」

「は、愚僧はどうでもよろしゅうございますが」と、当惑した顔をした。

「本尊の御薬師様を持って往くのじゃない、おつきの不動様じゃ、おつきは他にもいるから、一人位は持って往ってもいいだろう」