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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页

青空文庫

その桂月翁が最初に登山した時、「面白い薬師堂へ往って来たよ」と、飯の時に私に話してくれた。で、私もその翌日の朝、桂月翁が小学校の講演をすまして二度目の登山をした後で、三人の学生に案内してもらって、稲の穂の黄色くなりかけた田圃の間を通ってその薬師堂へ往った。小さな丘陵の麓のなだれになった処にその祠があった。その辺は積善寺の寺の名がそのまま残って積善寺部落と云われていた。

祠の中の縁起を書いた脇立は、其処から右の方の山の下に見えていた建物の大きな豪家にあるので、其処から持って来て見せてくれると云うことになっていたから、私達は祠の縁に腰を掛けて煙草を喫みながら話していた。県会議員をしていると云う有志の一人が檮の木で作った脇立と、隣村の城主の一族で長宗我部に滅されて其処で自殺したと云う武士の位牌を持って来て、祠の裏から内へ入って内から木連格子を開けてくれた。

背後に日輪を背負うた薬師の木像を真中にして、左に小さな毘沙門の木像が立ち、右には問題の不動の木像についた後光の板と剣があって木像は見えなかった。その木像は近比また何人かに盗まれたので、その木像の戻って来るような和歌を詠んでくれと村の人が桂月翁に頼んでいた。