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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页

青空文庫

その傍には初老に近い顔の沢つやした主人が立っていた。お作と女は貴人の宿をした覚えがないから、まごまごして返事もできなかった。武士の方ではそんなことにはかまわず、さっさと上へあがって従者の持っていた割子や吸筒を出して酒の用意をした。割子には柿などがあった。

「お酌をさすがよかろう」

従者がお作に云った。女はおずおずとその前へ出て酌をした。

「その方達にも、盃をとらする」

主人の武士が、盃を出すと従者達はそれを順々にまわして往った。女はそれにいちいち酌をした。

主従は酒に酔うてきた。主人は白い歯を出して折おり笑った。お作もその傍へ出て女に不調法のないように注意していた。

「この家には、魔物を払うた時に、旅僧からもらった木札があると云うことじゃが、ほんとうか」

と、従者の一人が云いだした。

「ほんとうでございます」

と、お作が云った。

「それを一つ見せてもらおうか」

お作は人に見せる仮の木札をこしらえてあった。彼女は立って往って棚の隅から木札を持って来て渡した。

「これか、これか」

と、従者はそれを手に執ってからすぐ主人の方へさしだして、

「これが、その木札でございますそうで」