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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页
鷲
土佐の海岸にあった私の村には、もうその比洋行するような人もあって、自由主義の文化はあったが未だ日清戦役前の半農半漁の海村のことであるから、村の人の多くの心を支配したものは原始的な迷信であった。
聖神と云う無名の高僧を祭ったと云う社の森には、笑い婆と云う妖婆がいて人を見ると笑いかけたが、笑いかけられた者はその妖婆の笑えなくなるまで笑わないと病気になって死ぬのであった。は、は、は、と云って笑う妖婆の声は山に反響をかえした。その聖神の社の近くにある楠の大木は伐ろうとして斧を入れると血が滴り、朝になるとその切口は癒えて痕が判らなかった。聖神の東になった山のはずれには、三味線松と云う幹の曲りくねった松があった。其処からは時とすると三味線の音が漏れた。その三味線松の近くには眼も鼻もない怪人があらわれることがあった。某日の黄昏隣村から帰っていた村の女の一人は、眼も鼻もない怪人のことが気になるのでこわごわ歩いていると、前を一人の女が往っている。村の女はよい道伴ができたと思ったので、急いで追ついて話しかけ、「此処は眼も鼻もないものが出ると云いますから、こわくてこわくて困っておりました、どうかいっしょに往ってくだされ」